受験シーズン、なのですね。
諸々あって、自分が受験生だった頃のこととか、テストのこととか思い出しています。そんなときに必ず、真っ先に思い出す試験があります。高校の数学の入試問題です。
私が通った高校は、入試がちょっと変わっていることで知られていました。特に数学の試験は、その特異さで有名でした。なんたって数学の試験なのに、下手な国語の読解問題を上回る量の文章を読ませるのですから。
後にも先にも、数学であんなテストを受けたことはありません。肝心の自分が受けた時の問題はもうすっかり忘れてしまいましたが、調べてみたら、私の高校の数学入学試験の過去問を載せた
サイトがあったので、びっくりしました。
読んでいて、涙が出そうになりました。
入学試験問題を、受験生が「楽しめるように」作る。今思い出せば、確かにそういう学校でした。
私は生まれてこのかた、算数・数学が得意だったことは一度もない人間です。それが何を血迷ったか、高校に入って3年生の夏まで「理系進学」を希望していました。理系に憧れるあまりの、若気の至りとでも申しましょうか。
当時、数学を筆頭に、理系の科目の点数は惨憺たるものでしたが、それらの教科を嫌いになったことは、少なくとも高校進学後は一度もありませんでした。とはいえ現実は残酷で、好きだからと言って必ずしも成績が伸びるとは限らないのですよね。私は10代半ばにして「こんなに好きなのに報われない」という片想いのつらさを存分に味わいました。まったく、あの頃の先生方には本当にご迷惑をおかけました。
結局高校3年の夏にようやく我に返って「文転(もしや死語?)」し、今に至るのですが、いまだに理系の話題はちっともわかっていないくせに結構好きで、自称「理系ミーハー」です。
今回改めて、自分が受験した高校の数学の入試問題を呼んで、心が震えるほど感動しました。ああ、これほど数学に向いていない私が、それでも数学は「苦手だったけど嫌いじゃなかった」と言えるのは、この高校に進学したおかげだったんだ、と、初めて自覚しました。
この入試問題、作るのも採点するのも、きっと想像を絶する手間なのだと思います。そう思いながらも、お世話になった何人かの先生方の顔を思い浮かべると、なんだかにやにやしてしまうのです。ものすごい情熱と愛情を持って、そしておそらく自分たちでもちょっとは楽しみながら、こういう問題を作っていたのでしょうね。
そんな先生たちのいる学校の数学の授業が、つまらないはずはありません。高校生の私はきっとあの雰囲気にほだされて、自分の能力も顧みずに「勉強するなら理系」と思い込んでしまったのでしょう。
この試験の一番すごいところは、たとえ不合格になったとしても無駄にはならないところではないかと思います。
たとえこの高校に入学しなかったとしても、別の学校での授業中に、あるいはもっとずっと後になってから、ふと「あ、そういえばあのとき入試で出たのってこの話?」と思いだすことがあるかもしれない。そんなことまで想定して、この問題は作られているような気がしてなりません。
実際、私も解いていて「面白かった」という記憶がある入試問題なんて、他にはまったく思いつきません。
余談ですが、数学だけでなく、物理、化学、生物など、理科系の授業はどれも面白く、生意気盛りの高校生に学ぶ楽しさを上手に教えてくださる個性的な先生ばかりでした。英語教育の知名度の高い学校ですが、その底力は理系の教育にあったのだなあ、と、高校生の子供がいてもおかしくはないくらいの歳になった今になって気付く私は、やはり相当に出来の悪い生徒です。
もしご興味がおありでしたら、上記のサイトで紹介されている入試問題を読んでみてください。「数学の入試問題」の常識が覆ること請け合いです。私はもちろん、いくつかプリントアウトしてじっくり解いてみるつもりでいます。
先生、遅ればせながら、本当にありがとうございました。