食品安全委員会が、BSE問題で輸入停止になっている米国産牛肉について、
検査なしで輸入した生後20カ月以下の牛のBSEリスクは、
日本の牛肉と比べて「差は非常に小さい」などとする答申原案を提示した
…そうです。
これは、専門家が大筋で輸入再開にGOサインを出した、ということのよう。
この答申の背景について色々と深読みをするのも可能なのでしょうが、
何せ私はこの問題について、ニュースを丹念に追っていたわけではないので、
個人的には「漠然と不安が残るんだけどなあ」といった意見しか言えません。
ただ、ひとつ、とても気になることがあるので書き留めておきます。
「安い牛肉が入ってくるなら、いいじゃない。今までも食べていたんだし。」
その意見、すごくよく分かります。
普段あまり牛肉を食べるほうじゃないけど、食材が安いのは当然嬉しい。
でも、そもそもなぜアメリカの牛肉は、日本と比べてそんなに安いのでしょう。
アメリカは、世界でも最も人件費の高い国のひとつであるはずです。
その国で、どうして日本と比べて非常に安く食肉を加工できるのか。
土地が安いから、牛1頭を育てるのに、日本よりコストがかからない?
でも、いくら牧畜を行う土地が安いとはいっても、
土地さえあれば牛が育つってものでもないでしょう。
少なくとも、食用に適した牛を育てるには、ある程度人手が必要なはず。
えさになる農作物が安いから?でも、それではどうしてその農作物は安いの?
…牛と同じ疑問がここでも繰り返されます。
要は。ディテールを省いて大枠だけを見れば。
「1頭あたりにかける手間を可能な限り省いて生産・加工している」
ということに尽きるのではないかと思うのです。
何も、アメリカの畜産業界を批判しようというのじゃありません。
そもそも、これは私の想像でしかなく、十分に人手と手間をかけても、
なおかつ安い牛肉を提供できる仕組みができているのかもしれません。
ただ、牛肉に限らず、現代の社会において、「食品」が「工業製品」と同じように
低コストで大量生産されている側面はあるような気がします。
この地球上の膨大な人口を食わせていくためには、
可能な限り少ない資源で可能な限り多くの食糧を得る必要はあるのでしょう。
地球上の人口は増え続けている一方で、緑地は年々減り続けています。
環境問題とは、煎じ詰めれば、食糧問題。
「安全な食糧を、安く」はもちろん大事。これが保障されなければ、
金持ち以外は飢えるか高いリスクに晒されることになります。
でも。そういった人間の努力の中で。
安価で栄養価の高いえさを与えようと、牛に肉骨粉をやっていたら、
どうやらBSEなんていう奇怪な病気になってしまったらしい。
十分な運動をさせず、狭いところに閉じ込めて太らせるブロイラーは、
インフルエンザのような感染症が発生したら最後、あきれるほど大量の鶏を
「処分」しなくてはならない。
…どうも、我々人間、なにか警告を受けているような気にさせられませんか?
こんなことをぐるぐる考えていると、時折背筋がぞくっとします。
出口がどこにも見えなくて、眩暈に近い感覚を覚えます。
そうなるともう、お酒もあまり美味しくない。
でも、たまには考えなきゃいけないかなあ。
そう思って、柄にもなく色々と書いてしまった休肝日でした。
ぐるぐるにお付き合いいただいて、ありがとうございました。