今日の「肴」はちょっと特別なのです。
これは「飯ずし(いいずし)」といって、
新潟県北部村上地方の、冬の郷土料理です。
私の大好物のひとつです。
もちろん、私は村上の出身ではありません。親戚もいません。
ただ、母のお友達がこの地方のご出身で、
毎年冬にこのお料理を手作りして、おすそ分けしてくださいます。
それですっかり味をしめてしまいました。
この母のお友達というのが、本当にステキな方で、
いつもお洒落でモデルさんのようにすらりと姿勢がよくて、
おまけにお料理が大層お上手で、私の憧れの人の一人なのですが、
それをここで書いているときりがないので今日はやめておきまーす。
で、その方に毎年おすそわけいただいているこの「飯ずし」。
かぶやニンジンに加えて、数の子や鮭やいくらなど豪華な具材を、
発酵したような感じのお米がとりまいていて、
甘酒を上品にしたような甘みと独特の酸味が後をひく、
なんともいえない美味しいお料理なのです。
んもう、これに日本酒の熱燗とコタツとお気に入りの本があれば、
何時間でも至福の「日本の冬」が過ごせる自信があります(笑)。
で、この冬、なんと。
この秘伝の「飯ずし」を教えていただくことになりました!
もうその話を聞いた年末から、興奮しっぱなしだった私です。
結局は母と叔母が直接「先生」に教わり、私が又聞きでそれを教わる、
という形になったのですが、ホントにわくわくしました。
教えていただいて初めてよく分かったのですが、このお料理は、
炊いたご飯に麹を混ぜ、そこに野菜や魚介類をはさんで、
漬物を作るように上から圧力を加えてじっくり発酵させる、
という、いわば究極の日本のスローフードだったのです。
ただし、野菜や魚介類の下ごしらえには、とても手間を要します。
「レンジでチン」というわけには、なかなかいきません。
母と叔母と、それでも簡略化したバージョンを作りながら、
昔の日本の台所を想像しました。
母のお友達の「先生」は、何と毎年一度にお米二升分(!)
を作られるそうですが、
私はスーパーでも売っているような漬物容器に
どうにか二合分を作り、「上手くできますように」と祈りながら、
我が家のワインセラーに入れて発酵を待ちました。
一週間経って味を見たら、うん、大丈夫でした。
そして二週間から二十日が経とうとする今頃、
一番美味しくなっている気がします。
麹の甘みがじんわりと口の中に広がって、
「日本人でよかったなぁ~」という味です。
もちろん、お供は日本酒です(笑)。
日本の風土が育んできた特別な冬の味。
それを、遠い東京で(自己流で)作らせていただける、
そのことを本当にありがたく思いながら杯を重ねてしまいます。
来年も絶対に作ります!