更新が遅くなってしまいましたが、14日の土曜日に『ジンガロ』を観に行ってきました!
『ジンガロ』については、ご存知の方も多いと思いますが、一言で言えば、人が馬に騎乗しながらアクロバティックな演技を行なうショーです。
ただし、後程詳述しますが、ショーといっても非常に詩的で奥深い世界であり、単にアクロバットを見て興奮するというよりは、馬と人とが一体となって作り出す世界観を楽しむという感じです。いわゆるサーカスなどとは一線を画したものです。
詳しい説明は
こちらをご覧ください。
さてさて、この『ジンガロ』、実は来日公演は今回は2度目です。前作も非常に評判が高く、行った人から直接話も聞いていたのですが、見逃しました。で、今回は演目を変えての再来日。馬好きとしてはぜひとも観たいのですが、チケットが少々お高いこともあり、躊躇していました。
それが、なんと、パートナーがホワイトデーのサプライズプレゼントとしてチケットを用意してくれていたのです! 安上がりの手作りチョコレートがまさか『ジンガロ』に化けるとは…結婚してよかった(笑)。
前回の日本公演の『ルンタ』という演目は、チベット仏教の僧が演奏する音楽に乗せて瞑想的な世界が展開されるという内容だったので、『ジンガロ』といえばそのような静謐で神秘的な雰囲気の作品ばかりなのかと思っていました。
ところが、今回の『バトゥータ』という作品は、ルーマニアのロマ(ジプシー)をモチーフに、非常に軽快でエネルギッシュで、時にはコミカルで下世話ですらあるような演出がなされており、最初は意外な感じがしました。とはいえ、期待した以上に楽しめる内容で、難しいこと抜きに誰でも「面白かった!」と思えるエンターテインメントになっていたと思います。
面白かった点、感動した点を数え上げると結構きりがなくなってしまうのですが…。
まずは、馬。もう何はおいても、馬(笑)。
いや本当にすごいんですよ、馬が。
基本的にアクロバットをするのは人間なのですが、それを支える馬たちも、真の意味でのエンターテイナーだと思いました。何というか、踊るわけでもなんでもないけど、ちゃんと「演技」しているんです、多分。単に騎手や出演者などが出す指示に従っているだけ、という感じがまったくしない。むしろ、馬が観客の様子や場の空気を読んで動いており、人間の方がその呼吸に合わせている、という感じさえしました。
それは、馬という生き物を最大限に美しく見せようという演出による部分も大きかったと思います。
競馬場に行ったことがある人なら同意してくださると思いますが、馬という動物はやはり、疾駆している姿が一番美しい。そしてこの『ジンガロ』では、客席に囲まれた円形の小さなパドックのような舞台を、馬たちがそれはそれは美しく駆け抜けていくのです。実際にはそれほど大きくない場所をぐるぐると回っているだけですが、それこそ広大な草原を縦横無尽に駆けているような、圧倒的なスピード感とのびのびとした雰囲気に、ただただ魅了されました。
極端な話、アクロバットがなくても、ああやってただ馬たちが疾駆していくだけでも十分に感動したかもしれない(笑)。
それと同じように、騎乗者の動きも実に美しく、また、馬に乗る喜びのようなものを感じさせてくれました。
彼らは羨ましくなるほど、あまりにも自然に馬に乗っているので、ショーの後半では実はものすごくアクロバティックな演技をしていることを、うっかりすると忘れてしまいそうなほどでした。
人間が、人間以外の動物とこれほど高度なコミュニケーションを取れるということ。これほど濃密な信頼関係を築くことができるということ。大げさにいえば、人類という種がまるきり孤独というわけではない、という喜びが表現されていたように思うのです。
他にも、ユニークな楽団(あえて「バンド」ではなく「楽団」と呼びたくなる感じなのです)の素晴らしい生演奏や、凝った小道具や美しく楽しい衣装、そしてしみじみとした余韻を残すエンディングなど、見所は尽きません。1時間半ほどが本当にあっという間でした。
ちなみにスポンサーが『エルメス』というだけあって、ショー以外の部分も非常にお洒落に演出されていました。たとえば、開演前に観客が時間を過ごすテントは、ちょっとしたカフェバーのような空間になっており、非日常気分を盛り上げてくれました。正直お値段はかなりぼっているとは思ったけれど、それでも、シャンパンを1杯飲んでから劇場へ…なんてことがすんなりできる雰囲気は、なかなか味わえないものですしね。
というわけで、『ジンガロ』を満喫したホワイトデーでした。
来年のバレンタインには、パートナーにエルメスの(もちろん馬柄の)ネクタイでもプレゼントしないといけないかな?