このブログでも時折言及していますが、去年の春頃から、TVで観る自転車ロードレースにすっかりはまっています。
ありえないような坂道を登ったりするコース設定、複雑な駆け引きを読み取らなくてはならないレース展開の面白さ、多様な選手の個性、実況解説の軽妙なトーク、そして観光PR映像顔負けといった景色の美しさなど、ツール・ド・フランスを最高峰とする自転車ロードレースの魅力は実に多彩です。そして、中でも最も基本的なものは「自転車そのものの造形的な美しさ」かもしれません。
実は、ロードレースを観始めるまで自転車が「美しい造形物」だなんてことは考えもしませんでした。いつ頃からか、どちらかといえば自転車を苦手なものと感じていました。
--乗れなくはないけど、わざわざ乗ろうとは思わない。
--歩くのが苦にならない身としては、歩道を走ってくる自転車はむしろ邪魔。
--とはいえ車を運転していると、車道をよたよた走る自転車は本当に怖い。
--駅前を占拠する違法駐輪自転車たるや、大量の燃えないゴミ以外の何物にも見えない。
日常生活での自転車に対する感想はこういったもので、むしろネガティブ。
そんな風だったので、TVで観るロードバイクの美しさには目を見張りました。軽量化とスピードを追求したスポーツバイクの美しさは、私の知っていた「自転車」とはまるで違う乗り物に見えました。
でも、それはきっと、世界有数のトッププロが乗っているからこその美しさなはず。もちろん造形物としても十分に鑑賞に堪えるフォルムだとは思いますが、自転車はあくまでも走らせるもの。ゆえに、自分とは無縁、あくまでTVの中の別世界。
…と、思っていたのです。つい先日までは。
あれは、まだツール・ド・フランスの期間中だったので、7月下旬だったかと思います。週末に夫と二人で近所を歩いているとき、唐突に思ったのです。
「自転車に乗りたい!!」
突然の心変わり(?)の理由は自分でもわかりません。強烈な日差しの照りつける猛暑の午後でした。こんな日は、アスファルトの照り返しにうんざりしながら歩くよりも、風を切って自転車ですいすい走れたら気持ちよかろう、くらいに思ったんでしょうか。
どうも夫はそんな私の1、2歩先を行っていたようで、既に「自分が買うんだったら」という前提で自転車の本など何冊か借りてきていました(私もそれらを横目でちらちら見てはいたのですが)。
その中の1冊、『
ものぐさ自転車の悦楽』という本において、「まず買うべきは折りたたみ自転車である」と推奨されていたと聞き、早速その本を購入。
で、本を購入した数日後には「私、ブロンプトンを買う!」と宣言していました(ちなみにそれに対する夫の反応は「オレはこの本を読んでも物欲に耐えたのに~」でした・笑)。
ブロンプトン。それは、自転車としての性能を損なうことなく、驚異的に小さく折りたためる英国製の自転車とのこと。
この姿かたち、そして「英国のクラフツマンシップ」的な物語にすっかりいかれてしまった私は(何しろこの手の「モノ」に弱いのです)、自転車とはほぼ無縁のこれまでの人生観をあっさり放棄することにしました。うーむ、我ながらミーハー。
で、この暑い中会社の近くの自転車専門店にでかけ、ブロンプトン本体、ヘルメット、カバー兼用のバッグ、チェーンキーなどの一式を大枚はたいて購入。
昨日は仕事帰りにそれをお店で引き取り、そのまま乗って帰宅するという「夏休みの大冒険」を夫婦で敢行しました!この暑いのにアホとしか言いようがありません。
ただ、乗ってみると自転車は予想以上に風を切る感じが心地よく、特に陽射しもない夜の走行は「暑い」という感じはありませんでした。止まるとさすがに汗が噴き出しますが…。
ちなみに夫が購入したのはブロンプトンではなく、ライズ&ミュラーというドイツの会社の「
bd-1」という自転車。これまたスポーティーでカッコイイのです。
憧れの自転車はルックスだけでなく、乗り心地も期待通り素晴らしいものでした。会社から家までの12kmは、ひたすら快感でした。こんな気持ちのいい乗り物があったなんて、今までの人生、結構損をしていたなあ。
もちろん、現在の日本の交通事情は決して自転車に優しくありません。かつて私もなんとなく感じていたように、この国では自転車は実に中途半端な扱いをされている乗り物です。幹線道路を走るにあたっては、歩行者や車との折り合いに相当気を配らなくてはなりません。自転車初心者にとって、この辺のハードルは低くはなさそうです。
しかし、一度乗っただけで「なるほど、これは紛れもなく軽車両だ。歩行者の延長などではなく、自動車に準じる交通ルールに従って、きちんと車道を走るべきものだ」と深く納得しました(飲酒運転なんて言語道断!)。その認識で今後も安全運転を心がけつつ、ちょっとずつ「自転車のある生活」に慣れていきたいと思っています。
あ、通勤に使うつもりは今のところありません。乗りたいのはやまやまですが、服装やシャワーなどクリアしなくてはならない課題が多すぎますし、何より都会で自転車に乗る技術をもう少し向上させなくては話になりません…。
ちなみに、前述の本も大変にオススメですが、私のように何が何でも折りたたみ自転車を買いに走りたくなってしまうかもしれませんので、取り扱いには注意が必要です(笑)。