今、プラネタリウムに行きたくて仕方がありません。
いや、本当なら本物の星空を見上げたいのです。
もう少し待って冬がきたら。
空気が静かに澄むような夜が東京にもやってくるようになったら。
先月の講談社文庫の新刊は嬉しいラインナップでした。
今一番「追っかけて」いる作家2人の作品が揃ったからです。
早速本屋で買い求めてどちらものめりこむように読みました。
偶然にも、どちらもプラネタリウムが登場する話でした。
1冊目は『
プラネタリウムのふたご』。
このブログでも何度も取り上げているいしいしんじ氏の作品です。
もちろん、危険を十分に察知した私は、通勤電車で読むようなことはせず、
自宅で酒と肴と一緒に堪能し、案の定またまた泣かされました(笑)。
真面目に書評っぽいものを書こうかとも思ったんですが、
もはや私はこの人の作品を客観的に語ることが不可能なことに気付きました。
久しぶりに自分の中で「殿堂入り」しそうな作家です。
多分、今後も絶対に新刊が出るたびに買うと思います。
今回の『プラネタリウムのふたご』は、基本的には、
『麦ふみクーツェ』を読んで「いいなあ」と思った方に無条件でお勧めします。
逆に、このいしいワールドがどうもピンと来ない、という人も多いでしょうが、
そういう人には「基本的に『クーツェ』と一緒ですよ」と申し上げておきます。
2冊目は川端裕人氏の『
せちやん 星を聴く人』。
この作家は本当にお勧めです。まだ読んでいない方は一度是非。
私は『夏のロケット』、『S.O.U.P.』、『リスクテイカー』、『川の名前』
などの小説にはまりましたが、ノンフィクションも素晴らしくよいです。
ただ、今回の『せちやん』は、悪くはないのですが、
正直なところ小説としてイマイチ熟成が足りないような印象もありました。
なんとなく、今まで読んだ小説のダイジェスト版のような筋に、
今までとはやや異質なテーマが乗っかっている感じです。
その意味で、何だか「過渡期」の印象がありました。
もし川端裕人を新たに読むのでしたら、最初は別の本がいいと思います。
私はこの人の本を読むと、何だかとても居心地がよくなるのです。
文章にはある程度人柄が透けて見えるものと思いますが、
この人の文章から想像できる人物像は、優しくて秀才のお兄さん。
頭が抜群に切れる上に、人柄はとても誠実。そして何より文章が上手い。
読む人のペースに合わせてくれる余裕のある文章です。
ああ、こんな家庭教師が欲しかったなあ…。
(ちなみに著者近影を見ると顔もハンサムです♪)
ただ、川端裕人が「秀才」だとすれば、いしいしんじは「天才」のような気がします。
もちろん、自分の感性に合うという贔屓目は重々承知なのですが、
「ああ、この人は天性の語り部だ」という気にさせられます。
彼以外の誰も作り上げられない、くっきりとした世界があるのです。
(ますむらひろしの漫画に通じる何かを感じます。)
というわけで、全然作品のことを書いていないのですが、
まあとにかく、お気に入りの作家の新作を立て続けに2本読んで、
至福の「読書の秋」でした。
そして、本を読んで星を見たくなってたまらなくなった私は、
BUMP OF CHICKENの「天体観測」を聞きながらこれを書いています。
あああ、これまた本当~にいい曲なんですよぉ~。