久しぶりに本の話など。
一時期読書の非常にペースが落ちたのですが、最近持ち直しています。
これは、ハイパー読書家のパートナーの影響も大きいのですが、
現在の部屋のご近所にいい図書館があることが決め手になっています。
「図書館で借りればいいや」と思うだけで、
読む本の選択肢は大きく広がるものですね。
手元にずっと置いておきたい本、お気に入りの作家の本などは
もちろん自分で購入しますが、
それ以外にも「ちょっと気になる」程度の本に
気軽に手を出せるのが図書館のいいところ!
他にも、読もう読もうと思っていて後回しになっている古典などにも、
図書館は抜群の威力を発揮してくれます。
で、今読んでいるのは『源氏物語』。
「千年紀」のブームにちゃっかり乗ってみました(笑)。
古文・漢文が大嫌いだった私。
この王朝文学の最高峰に位置する大作も、これまで通読はおろか、
拾い読みさえしたことがありませんでした。
何はともあれ、一度通して読んでみよう、ということで、
原文ではさすがに無理なので、現代語訳にしました。
与謝野晶子版を選んだのに特に深い意味はなく、
単に図書館にあった中で最もハンディな大きさだったというだけ。
持ち歩けないと、通勤中に読めませんから…。
読み始めたら意外に面白かったので(笑)、
比較的順調に読み進むことができています。
現在、宇治十帖に入ったあたりです。
いくつか、意外に感じた点を。
まず、源氏物語は後半の方が断然面白く感じます。
登場人物が多くなって少々混乱はしますが、
主人公が光源氏の下の代になってからの方が、
ストーリーのテンポもいいし展開も面白い。
登場人物のキャラクターの描き方にも深みが出てくるような気がします。
特に宇治十帖は、まだ途中ですが物語に勢いがあって、
ぐいぐいと話に引き込まれていくような力強さを感じます。
これは、拾い物をしたような嬉しい発見でした。
ところで、光源氏は実は結構失恋もしているんですねー。
読む前は、「ドンファン・光源氏の華麗なる恋の遍歴」
てな世界観を想像していたんですが(笑)、
失恋とまではいかなくても、想いを寄せた女性に何度も拒まれたりしている。
これは、貴女はそう軽々しく男の誘いに応じるものではない、
という当時の美意識の表れなのかもしれませんし、
恋愛があまりにもスムーズに運ぶばかりでは話として面白くない、
という作者の意図もあるかもしれません。
与謝野晶子は訳にずいぶんと工夫をこらしたのでしょう。
かなり大胆に、現代語に置き換えていると想像される箇所もあります。
ところがこの、昭和初期(かな?)の「現代語」、
現在とは一味違う趣があります。
たとえば源氏や薫が女房に「ちょいと」などと呼びかけているのには、
思わず笑ってしまいました。
小津映画のようですね(笑)。
「あいにく」ではなく「あやにく」という発音も新鮮です。
かと思うと、匂宮が「恋愛結婚がしたい」と思っている、
なんていうずいぶんイマドキな(笑)表現も出てきます。
とにかく、色々な読み方・楽しみ方ができる『源氏物語』。
千年も昔に、こんなにも懐の深い文学作品があったことに、
改めて驚かされました。